【登山紀行】vol.17 「迷走台風に翻弄!?一泊二日で歩きつくす尾瀬の山旅」

登山紀行

8月末の4日間の休みは黒部湖周辺を歩く計画を立てていたのですが、その前の週から怪しい台風が日本を右往左往して結局4日間の縦走は断念。
休みの前々日になってようやく台風がまだしばらく西日本に停滞することが分かったので、比較的崩れが小さそうな北関東の山へ久々に出かけることにしました。

Written by Chika


5年ぶりくらいの尾瀬。過去3回行ったことがあったのですが、まだ尾瀬の山には登ったことがありませんでした。夫も初めての尾瀬だったので、2日間で尾瀬のメジャールートと、燧ヶ岳・至仏山をまるっと歩き尽くすことにしました。

連休1日目はどこに行くでもなく、久々にお昼すぎまで爆睡。その間に夫は車中泊を快適にするべく、アップデート作業をしていました。完成した車を早く試したかったようで、その日の20:00頃に茅野を出発し、尾瀬に向かいました。

最近車の中ではテレビを付けているのですが、山に行く道中、「カズレーザーと学ぶ。」を見て、また1週間が終わった(始まった?)んだと感じるのがここ最近のルーティンとなっています。この日の回は目のトラブルに関する内容でした。日差しを浴びることが多い日々、結構気になる内容が多くて夢中になって見ていると、いいところで峠に差し掛かって電波が入らなくなり、結論がわからない…なんてもどかしさを抱えながら、長野の峠をいくつも越えていきます。

湯の丸峠を越えたあたりで鹿が3頭。よく見るとカモシカが混ざっていて、その1頭だけのそのそと山の中に入っていきました。
さらに峠を越えていくと、途中に八ッ場という地名が。もしやあの八ッ場ダム?と気になりましたが、そのまま尾瀬へ向かいます。

戸倉に到着したのは深夜0時を超えた頃でした。長野から北関東に出るのはやっぱり遠いです。車を止めてふと外を見るとオコジョらしき小動物が歩いていました。今回はよく動物に遭遇するなあ〜なんて言いながら、車中泊仕様にセッティング。やっぱり頭から足まで横になれると楽です。横になるとすぐに寝てしまいました。

縦走1日目。この日は始発のバスで鳩待峠に向かう予定。が、バス停を間違え始発を逃しました(始発だけ駐車場から出ていないという罠…)。計画的には問題なかったのですが、気持ち的にはだいぶ損した気分になりました。

気を取り直して1時間後のバスに乗り、鳩待峠を7:00に出発しました。鳩待峠からアヤメ平までは緩やかな木道の登り。でも前日の雨で木道がつるつるで、結構怖いところもありました。

この2日とも曇り予報なので、雨に降られないだけマシかな、と思いながら黙々と歩き進め8:30アヤメ平に到着。アヤメ平は5年前くらいに大学時代の友人と歩いたことがあったのですが、その時もガスガスで、小雨まで降ってました。いつかアヤメ平の池塘に青空が映った様子が見れるのでしょうか…もう来ないかもしれないけど…

その先の木道は東電が整備したばかりで、立派な木道でした。すこし傾斜のあるところはゴムが打ち付けてあって非常に歩きやすかったです。尾瀬ヶ原に下る分岐にある富士見田代では燧ヶ岳が良く見えました。この日のうちに燧ヶ岳まで登る予定だったので、予報よりも天気が持ちそうで、少し安心です。

さて、ここからは尾瀬ヶ原まで一気に下ります。呑気に鼻歌を歌いながら降りていると、前を歩いていた夫が「熊!!!!」と叫びました。顔を上げると、笹薮に逃げ込む黒い物体が。尾瀬は熊がよく出るのは知っていたので熊鈴をつけて歩いていましたが、それが本当に効いたようでした。夫が居た場所から15m前にあった木の上でお食事中、熊鈴の音を聞いて急いで木から飛び降りたようです。熊は木から飛び降りたあとしばらく近くの笹薮から動いていなかったので、我々もその場から動かず笛を吹いたり大声を出して威嚇をしていたら、笹薮の奥へと逃げていきました。これまで幸運にも熊にばったり出会ったことがなかったのですが、今回初めて熊に遭遇して、やっぱりとっさのことで一瞬頭が真っ白になってしまいました。

熊に足止めをくらったため、竜宮十字路に着いたのは10:00前でした。尾瀬ヶ原の真ん中にある十字路は燧ヶ岳も至仏山もよく見えて、尾瀬に来たことをようやく実感します。湿原一面の草原はほんのり色づいていて、秋も目前です。
さらに30分程歩いてこの日の宿泊地、見晴キャンプ場に到着。普段は賑わうキャンプ場も、この日はまだテント2張のみでした。受付を済ませ、さくっと設営。今回もクロスオーバードームとニンジャタープの組み合わせの豪華仕様です。

さて、ここから今日の大本命、燧ヶ岳へ。見晴新道ピストンか、余裕があれば尾瀬沼の方へ下ります。見晴新道は泥だらけで崩壊しているイメージだったので、できれば下りは別の道で下りたいと思いつつ気合を入れて登り始めます。割と序盤から道が掘られていてぬかるみになっているところが多いです。それでも5合目までは比較的緩やかでした。ここからは本気を出して急坂になります。デカビタCゼリー1.5倍でガッツを注入し、山頂へ。7合目くらいからガスが上がってきてしまいました。まあでも雨が降らないだけマシ、と再び言い聞かせ、更に急になる道を一気に上ります。燧ヶ岳山頂には13:45頃到着。本来は湿原や会津方面の山を見渡せるのでしょうが、今回は全くのガス。一瞬の雲の切れ目でうっすら尾瀬ヶ原が見える程度でした。

余裕があったので、尾瀬沼経由で、ナデッ窪を下りることにしました。途中ミノブチ岳に寄り道して、一通り燧ヶ岳の山頂と言われる場所を押さえておきます。と、ここまでは順調でしたが、ここから地獄の始まり。このルートはよくよく調べると、歩く人が比較的少ない沢道で、急坂と岩と苔と蜘蛛の巣の応酬でした。膝をかばいながら慎重に歩いて、尾瀬沼に着いたのは下り始めて約2時間後…なかなかタフな道でした。熊が怖いので、暗くなる前に急いで見晴キャンプ場まで戻りました。

テントに戻る前に受付でコーラを購入。地酒を買おうと思っていたのですが、疲れすぎて全然お酒を飲む気になれませんでした。ご飯を作っている間、コーラで疲れた体を癒します。キャンプ場の奥の方でゴソゴソと音がしていて、良く見たら鹿がおこぼれを食べに来ていたのか、のんびりキャンプ場を歩いていました。
この日の夕飯は炊いてあったご飯に牛しぐれの炊き込みご飯の素を混ぜて炊き込みご飯もどきを作りました。ちょっとご飯少なめで味が濃いめで、疲れた体に染みました。熊と急坂で心身ともに疲れ、ご飯を食べたらすぐに寝てしまいました。

翌日は3:30起床。ルーティンとなりつつあるカレーメシとスティックコーヒーを体に取り込み、眠い体を叩き起こします。この日は行程自体はさほど大変ではないのですが、台風が近づいてくることを考慮し12時のバスには乗る予定。5:00にキャンプ場をスタートし、山ノ鼻まで尾瀬ヶ原を突っ切っていきます。

誰もいない贅沢な尾瀬歩き。ほんのり冷たい空気が頬をなでていくのが気持ちいいです。遠くには湿原から朝霧が湧いていました。昨日とは打って変わって山がよく見えます。途中の沼を覗いては、浮かぶ水草が可愛らしいねえ〜、こっちは至仏が映ってる!こっちには燧ヶ岳が映ってる!なんて言いながら、尾瀬の草原を満喫。たまにすれ違う人との挨拶もちょっぴり清々しい表情になってしまいます。

のどかな尾瀬を堪能していると、なんだか怪しい獣臭が。途中ある橋に「熊注意!通行時は鐘を鳴らしてください」と警告がありました。一応鳴らして、そこから少し進んで山ノ鼻も目前になった頃、左手からすごい勢いで熊が横切っていきました。こんな小屋の近くで熊が歩いているなんて…と衝撃を受けつつ、一度の山行で二度も熊にあってしまい、運がいいのか悪いのか複雑な心境でした。山ノ鼻キャンプ場は熊の影響で閉鎖していましたが、納得です。熊を寄せ付けないよう、テント場での過ごし方もより気をつけないと、と身が引き締まります。

この後の上りに備え、至仏山荘の前のベンチで小休憩。最近は小腹が空く前、長い登りや下りなどの体力が必要になる場所の前で、プロテインバーを食べるのがお気に入りです。疲れるとなかなか食べ物が喉を通らないので、そうなる前にガツンとチャージしておきます。お気に入りはザバスのバー。ホロホロと崩れて顎が疲れないのと、そこまで口の水分を持っていかれないのがいいです。休憩しながら足をマッサージしてリフレッシュ。余裕があるときは靴も脱いで足の裏をマッサージします。

山ノ鼻からすこし湿原を歩いて植生保護の柵を過ぎ、いよいよ至仏山への登りです。こちら側の登山道は夏は上り専用になっています。確かに歩き始めると、急な坂道にところどころ木道が崩れているところがあったり、水が流れ出していて滑りやすかったり、登りでも気を使うところばかりです。登山道に笹が張り出しているところも多々。熊と遭遇したばかりだったので、時折笛を吹いて警戒しながら登り進めます。

登り始めて40分経たないくらいで森林限界に到達。後ろを振り返ると、広大な尾瀬ヶ原と奥に聳える燧ヶ岳が良く見えました。時折、ツルツルの蛇紋岩が「滑らせてやるぞ」と言わんばかりに横たわっています。一体、何人の登山客がこの罠に引っかかっているんだろう。そんなくだらないことを考えながら登り進め、9:15ごろ至仏山山頂に到着。

山頂の碑はこれまで見た中でもトップクラスで立派でした。西側は台風の影響で雲がもくもく。東北方面を見ると、遠くに憧れの飯豊山が薄っすらと見えました。皇海山や上州武尊山、日光白根山など関東の名山も良く見え、あそこは冬に行きたい、だの残雪期に行きたい、だの頭の中で勝手に次の登山計画が生み出されていきます。夫は上越の米山が見えたらしく、久々に見えた地元の山に興奮気味でした。

ひとしきり尾瀬ヶ原とその先の山々を堪能し、小至仏山へ向かいます。ちょっとした岩場が続くゆるい下りは歩きやすいような歩きやすくないような。尾瀬ヶ原と燧ヶ岳の景色とももうすぐおさらばだと思うとなかなか足が進みません。後ろ髪を引かれつつ、バスの時間が気になる頃合いになってきたので下山に集中。鳩待峠に向かう道は緩やかな尾根を下っていくので、非常に歩きやすいです。

一心不乱に鳩待峠を目指し、11:15登山口に到着。バスの時間までしばらくありそうだな、と思っていたらちょうど乗合タクシーが出発するタイミングで、ノータイムで戸倉まで戻ることができました。台風のこともあったのですが、帰りは温泉街とダムに寄り道〜なんて観光気分で帰りたかったので、とてもありがたかったです。

戸倉を出発して、吹割の滝のドライブインでお昼休憩。夫は何年か前にこの辺でキャンプをしたことがあったらしく、懐かしそうにしていました。さらにそこから伊香保温泉へ車を走らせます。学生時代ぶりの伊香保温泉は雨がすごくて観光どころではありませんでした。さっと石段の湯で汗を流したあと、名物の石段を土砂降りの中急いで降りる羽目になりました。お腹いっぱい、リフレッシュした体に襲いかかる眠気がものすごく、豪雨の中運転していた夫に申し訳なく思いつつ寝ますと宣言して爆睡。気づいたら八ッ場ダムの入口にいました。閉館ギリギリで資料館は見られませんでしたが、重力式コンクリートダムのずしっと構えた姿が圧巻でした。近くの道の駅にも寄り道をして、嬬恋産の新鮮野菜を大量購入。その隣のデイリーで旅のお供に塩豆大福と飲み物を買ったら、まさかの500円以上のお買い物で塩豆大福1個プレゼントとのこと。お腹いっぱいの帰り道になりました。

久々の関東の山は動物と戯れる楽しさ半分、恐怖半分のサファリツアーのようでした。久しくアルプスの稜線ばかりを歩いていたのでつい忘れがちな動物たちの存在、見えなくてもすぐ側にいることを感じさせる2日間でした。

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2024.08 尾瀬

1日目:鳩待峠〜アヤメ平〜竜宮十字路〜見晴キャンプ場〜燧ヶ岳〜尾瀬沼〜見晴キャンプ場
2日目:見晴キャンプ場〜山の鼻〜至仏山〜鳩待峠

36.5km
↑2,333m ↓2,333m
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