怒涛のお盆休みが終わり一息ついた8月の後半、つかの間の2日間の休みで北アルプスの朝日岳〜雪倉岳〜白馬岳を縦走しました。
このあたりは小学生の頃に白馬乗鞍岳に行ったことがあり、眼下に白馬大池が広がっていた記憶がうっすらあるのみでした。そんな久しぶりの北アルプス北部、特に積雪量が多いこの山域はどんな縦走路が広がっているのだろう?と期待しながら登山口の蓮華温泉へと向かいました。
Written by Shunpei

お店を閉めてからパッキングを済ませ茅野を出発し、下道約4時間の道のりで、深夜1時過ぎに蓮華温泉に到着。車内で仮眠を取り、6:00に歩き始めます。
今回、バックパックは私が山と道のMINI、妻がSAYAMA worksのNICEDAYを使用しました。
バックパックの総重量はそれぞれ8kgと5.5kg。

この日の行程は、蓮華温泉から五輪尾根を経由して朝日岳に登頂し朝日小屋にテント泊の予定。スタート後はまず瀬戸川まで400m弱、標高を下げるところから始まります。かなり立派な木道が整備されていてありがたいのですが、微妙に湿った木道はとにかくツルツル滑ります。滑り止めの木のブロックを足がかりに慎重に下ると、途中、兵馬ノ平という湿原が現れ、遥か遠くに朝日岳方面の尾根が見えました。これから向かう先に晴れ間が見えて期待が高まります。
そこから更に斜度が増す下りを終えると、瀬戸川に架かる立派な橋が現れました。
山奥に似つかわしくない堅牢な土台と橋桁は、このあたりが豪雪地帯であり、その雪にも耐えうる構造を持っていることを伺わせます。

瀬戸川を越えてからはひたすらの樹林帯の上りで、気温も高く吹き出す汗が止まりません。約2時間半登ると急に視界が開け、ようやく五輪尾根に乗ります。ここから先は木道の歩きやすい道でした。五輪尾根の途中には五輪高原が広がっており、きっと晴れていれば気持ちの良い景色が広がるはずですが、今回はあいにくの天気。高原が終わって五輪山直下のトラバースが始まる辺りからは朝日岳が雲間から見え隠れしていました。
「五輪」という名前の由来はあとから調べてみても有力な情報は得られず…知っている方がいらっしゃいましたら教えて下さい。花の時期は見事だそうなので、きっと花が関係しているはず、と想像しました。山の名前の由来を想像しながら登るのも面白いですよね。

途中の水場で喉を潤したりクールダウンしながら登ると、吹上のコルに着きました。日本海の親不知からスタートして北アルプスに至る栂海新道との合流点で、いつかはこの道を経て海まで、という憧れのルートの一つです。

吹上のコルで一息つき、朝日岳頂上を目指します。途中までは五輪山が見える程度に晴れていたものの、山頂につく頃にはあたり一面ガスに包まれており、山頂の真上だけ晴れて青空が見えていました。
まだ13時過ぎで時間もたっぷりあったため、しばし山頂のベンチで晴れ間を待ちつつ昼寝をしました。時折、富山湾のようなものが見え隠れしたものの、天候は変わらず。14時頃にこの日の目的地の朝日小屋に向けて出発しました。

標高を下げると次第にお花畑が現れ、山間の平らな場所に建てられた朝日小屋が見えてきました。朝日岳と前朝日の間の平らな土地に建てられた小屋は、真っ赤な三角屋根が可愛らしく、草原に伸びる道も美しくとても雰囲気の良いロケーションでした。

受付を済ませ、テントを設営。近くに池塘があったり朝日岳が見える抜群のロケーションのテント場は設営場所を選び放題です。私達は日本海が覗く平らな場所にサクッと設営しました。朝日小屋はご飯も評判でいつかは泊まってみたい小屋のひとつ。管理人の方はピリッと辛口ながらも、テント泊受付時のやり取りだけでも伝わってくる優しさや温かさがあり、とても惹かれる山小屋でした。

テントを設営してもまだ15時前。たっぷりある時間をどう過ごすか、贅沢な悩みも山の楽しみの一つです。結局、何もせずに風に吹かれながら昼寝をしたり、少し散歩をしたり、いつもと変わらないのんびりとした時間を過ごしました。ご飯を食べ終わって夕暮れ時、少し歩いたところから富山湾と黒部川が見えました。さらに反対側には翌日歩く雪倉岳と白馬岳が姿を表し、山頂がほんのりと焼けた姿が見られました。明日は晴れることを願いながら就寝。
寝具は今夏の定番となっているSTATICのADRIFT LINERとSOLのエスケープヴィヴィの組み合わせです。ADRIFT LINERは毛布のような触り心地で気持ちよく、10℃前後の気温では今回の組み合わせで快適に眠れます。洗濯機で洗えてケアもお手軽な点がほんとに使いやすくてオススメです。

翌日は2時に起床、いつも通りカレーメシで腹ごしらえをして3時半に出発。この日はコースタイム12時間、21kmの長丁場です。朝日小屋を出発すると、昨日登った朝日岳の中腹を巻くようにつけられた水平道を歩きます。水平道という名前とは裏腹に細かいアップダウンがあったり、ちょっとした岩場があったり意外と時間がかかりますが、それでも朝日岳を登り返すよりは断然楽な道のりです。しばらくして木道が現れ、朝日岳と雪倉岳との分岐に到着。このあたりの木道はとても立派で、市松模様の凸凹がついていて朝露に濡れて滑りやすいコンディションでもサクサク歩ける道でした。「数年前はもっと水平ではなかったよ」と後日お店でお客様から聞いてびっくり。道理で比較的新しい鎖や木道があったのですね。

分岐から先、雪倉岳の取り付きまではほぼ平坦な歩きやすい木道の道。先に見える雪倉岳は上部が雲に隠れていて流れも早く、風が強そうです。しばらく進むとガレ場が現れ、左手の赤男山の斜面に露出した大岩の燕岩が目の前にドーンと姿を表しました。岩を過ぎてすぐ、赤男山と雪倉岳のコルは風の通り道になっているようで、このあたりから強い風に晒されるようになりました。

コルを抜けて雪倉岳の岩稜を巻くようにトラバースすると、次第にガスが晴れ始めました。正面には妙高や火打、雨飾などの頸城山塊が見え、その左には昨日ガスで全く様子がわからなかった五輪山と五輪高原を見ることができました。

ジグザクの少し急な道を登り終えると、山頂まではなだらかで広い尾根歩きになります。風を遮るものがなく少し寒かったので、レインウェアを着込みそのままサクサクと登り進めます。

7:00、雪倉岳山頂に到着。眼の前には白馬岳に続くなだらかな稜線が広がっていました。豪雪が作り出した緑と岩の縞々のコントラストがとても美しく、これから歩く道に期待が膨らみます。少し視線を右に移すと白馬岳から旭岳、清水岳に続く鋭く立派な稜線がよく見え、祖母谷温泉を起点に、今後歩きたいルートの一つに加わりました。
遠くには白馬大池、今日の終盤に歩く蓮華温泉に降りる急な下りも見えてまだまだ長い行程に気合が入ります。

雪倉岳から避難小屋までの急坂を下ると気持ちの良い稜線歩きが始まります。とにかくチングルマが多く、すでに綿毛に移り変わっていたものの、登山道の周囲一帯の群生地は圧巻で、花のシーズンや紅葉シーズンにまた来たくなる雰囲気でした。広大な稜線は絶景で歩きやすく、サクサク進みながらも立ち止まり振り返り、景色をじっくり味わいました。

新潟・長野・富山の三県が接する三国境の手前まで来ると富山湾や黒部川が見渡せます。

そこから白馬岳山頂までは30分程度、いくつかの偽ピークに惑わされながらも順調に白馬岳に登頂しました。山頂はあいにくのガスで、風がしのげる場所で行動食を食べていると富山県の山岳警備隊の方に会いました。この方は、この日我々と同じ行程を1時間半遅く出発し、雪倉岳山頂で追い越され、更に白馬岳山頂の先まで行って折り返してきたところでした。この日は朝日小屋に向かう登山者が多いようで、朝日小屋〜白馬岳のルートをピストンでパトロールしているとのことで、「午後から荒れるかもしれないので早めの行動でお願いしますね!」と言い残し颯爽と走り去っていきました。
休憩もそこそこに、10:00白馬岳山頂をあとにしました。

三国境まで戻り、そこからは小蓮華山、白馬大池方面を目指します。序盤の下りでは晴れていた稜線上も次第に雲に覆われ始め、小蓮華山に着く頃にはあたりは真っ白。天気も気になるところなので休憩もそこそこに歩いていると、雷鳥が姿を表してくれました。この夏シーズン既に4回程アルプスに足を運んでいますが、鳴き声は聞こえるもののまだ一度も見れていなかった雷鳥にテンションは急上昇。登山道を塞ぐように砂浴びをしていて、邪魔をしないように避けて通ります。それにしても、人馴れしすぎていて大丈夫?と心配してしまうほどの距離感です。

雷鳥に癒やされながら歩き続けるとガスの中から白馬大池が見えました。昔小学生の時に白馬乗鞍から見た大池のうっすらとした記憶が上書きされるような、不思議な気持ちになりました。12時過ぎに白馬大池山荘に到着。これから蓮華温泉への下りに備えてしっかりと休憩を取りました。

13:00、蓮華温泉に向けて出発。
大池からは滑りやすい岩が連続する斜面を黙々と下ります。途中天狗の庭と名付けられた、雪倉岳から見えていた展望の良さそうなところもガスに包まれていました。眺望のない道をひたすら下り続けます。いつものごとく下りはとにかく黙々とこなし、15時に蓮華温泉に下山しました。
北アルプス最北の山小屋や雪深い山域の雄大な景色を堪能した2日間。次来るときは祖母谷温泉からの白馬岳、もしくは栂海新道を織り交ぜて来よう、なんて話をしながら帰路に着きました。
p.s.
帰りは安曇野にある登山道具ショップ「TREK VOGEL」に寄り道。オーナーの小林夫妻はEightdoorがオープンしてから間もない頃に遊びに来てくれて、その後安曇野にお店をオープンされました。気さくで、ちょっとしたコントのような、笑いが絶えない素敵な方々です!山帰りに是非立ち寄ってみてくださいね。
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2024.08 朝日岳、雪倉岳、白馬岳
1日目:蓮華温泉〜五輪尾根〜朝日岳〜朝日小屋
2日目:朝日小屋〜雪倉岳〜白馬岳〜小蓮華山〜白馬大池〜蓮華温泉
32.9km
↑2820m ↓2828m
※2日目が長丁場になるため、白馬山荘などでもう一泊するのがオススメです。
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