【登山紀行】 Vol.25 白と黒と青の、冬の北岳へ

登山紀行


今年2月の前半の定休日は天気に恵まれず、思うように計画していた山に行けない日々が続いていました。
2月後半になり冬型が緩んだので、ここぞとばかりにかねてから狙っていた北岳へ登ることに。

昨年の夏に嶺朋ルートから北岳に登り八本歯周辺の核心部の下見をして、満を持しての冬の北岳。長いアプローチを抜けると極上の稜線歩きが待っている冬の北岳の様子を、例によって写真多めでお送りします。

(2025年2月の記録です。)

Written by Shunpei

砂防ダムにはアイスクライミングができそうな氷爆が出来上がっていた。

今回のルートは夜叉神から入り、鷲ノ住山から野呂川まで一度下り、あるき沢から池山吊尾根を経由して山頂に至る古の北岳登山ルートのピストンです。
陽が当たり春を感じるほど暖かく穏やかな夜叉神をスタート。長いトンネルを抜けると、野呂川沿いの道に出ます。芦安と山で隔てられた野呂川沿いの道は陽が当たらず、北岳から吹き下ろしてくる空気も冷たく、身が引き締まります。

60Lのザックがパンパン。

更に一時間ほど歩くと鷲ノ住山への登山道が現れます。今回登る池山吊尾根ルートへのアプローチはここから鷲ノ住山を超えて野呂川の発電所まで約400m下る必要があります。ここで荷物を下ろして小休止。
林道歩きが長かったため序盤はアプローチシューズで歩き、冬靴はザックにパッキングしたこともあり荷物はそこそこ重く、ここからの激下りに備えて今一度気合を入れ直します。

雪は無かったものの落ち葉滑りやすく荷物も重いので慎重に

発電所までの下りは序盤は荒れ気味の道でしたが、送電線の鉄塔を過ぎたあたりから鉄塔の巡視路になり、歩きやすくなりどんどん標高を下げます。発電所脇の吊り橋を渡り、少し登り返して車道に復帰しました。車道からは川の対岸にさっきまでいた左岸の道路がはるか上に見え、帰りはまた登り返すのか、、と思わず大きなため息が出ました。

発電所から更に車道を30分程度歩いて、ようやく真のスタート地点、あるき沢のバス停に到着しました。ここまで約3時間、もうすでに一つ登山を終えた気分です。アプローチシューズをデポして池山御池を目指します。

出だしは雪は少なく落ち葉に覆われた道でしたが、次第に雪が現れ始めました。足を滑らせたらひとたまりもない急斜面に、ガリガリに凍った根雪がついた場所もあり、なかなか気が抜けません。

樹林帯に突如ポッカリと空いた広場が現れる。
奥に見えるのは池山御池小屋。ここに小屋を建てよう!と思うのも納得のロケーション。

しばらくして斜度が緩み、しっかりとトレースのついた樹林を抜けると、16時頃に池山御池に到着しました。この日はここまで。しっかりとご飯を食べ、18時前には就寝し翌日の山頂アタックに備えました。

余談ですが、この山行の数日後、冬の北岳をテーマにした「マークスの山」という推理小説を読んだのですが、今回歩いたルートや池山御池小屋が様々な事件の現場として登場していました。描写がとても緻密で、殺人が絡むので、行く前に読まなくてよかったです。

翌朝は4:00に池山御池を出発。まだ暗い樹林帯を歩き続け、城峰を超えた2600mあたりで日の出を迎えました。

間ノ岳と農鳥岳を望む。天気はバッチリ。
ここを登りきれば北岳とご対面。
振り向けば富士山が背中を押してくれる。

森林限界の砂払いに近づくと間ノ岳と農鳥岳がチラ見え。森林限界ギリギリのところで装備を整え、いざボーコン沢の頭へ。

ボーコン沢の頭手前の斜面を登りきると、とうとうお目当ての北岳の姿を始めて目にすることができました。

この日の天気予報では、朝方が風が強く日中弱まっていく予報でした。ボーコン沢の頭のケルンに着いた途端に、耐風姿勢でもバランスが崩れそうになる程の強風に吹かれ、撤退か、、!?と思いきや、その後はピタッと風が止んでくれました。

雲一つない空に映える、雪が付いたバットレスの迫力に思わず身震い。これが見たかった、、とすでに満足モードになりかけていましたが先へ進みます。

我らが八ヶ岳。

ここからは昨年夏に下見をしたルートに合流し、正面には北岳、左には間ノ岳と農鳥岳の絶景を楽しみながらしばしの稜線歩きになります。ボーコン沢の頭から八本歯の頭までの稜線歩きは、アクセスが大変な分、満足感の高い好ルートです。
冬はハードルが高い…という方はぜひ夏に!!

嶺朋ルートを歩いた記録はこちら↓

ボーコン沢の頭からなだらかなアップダウンを繰り返し、雪原を抜けるといよいよ核心部の入口である八本歯の頭に到着。ここから八本歯のコルまでは岩稜帯の下りが待ち受けます。

ギザギザの岩稜はまさに”八本歯”
トラロープはボロボロなので体重のかけすぎに注意。

1つ目の下りはなんなくクリア。2つ目の5mほどのクライムダウンのポイントは出だしが垂直で緊張します。アイゼンの前爪を露出した岩に乗せて慎重に下っていきます。リッジはステップを切りながら慎重に。雪は思ったより少なく、夏の下見の時に想定していたよりも難易度は下がっていたように思います。

富士山の隣には八本歯の頭。

八本歯のコルに下り終えると山頂まで300mの登り返しです。カリカリに凍ってると怖そうな吊尾根分岐手前の長いトラバースは、しっかりとアイゼンが効き、歩きやすかったです。

しばらく登ると北岳山頂から北岳山荘に至る主稜線との分岐に到着します。稜線に出ると中央アルプスがお目見えすると同時に、西からの強風に襲われました。

岩の隙間を縫って雪の繋がっている場所を登る。
歩いてきた池山吊尾根。甲府の町並みと富士山もくっきり。

夏道を辿るとカリカリに凍ったトラバースが現れたので、それを避けて稜線上の岩稜帯へ。素晴らしい景色で歩みもついついスローになっていまします。

最高の稜線歩きを楽しんで北岳山頂に到着しました。いつか行きたいと思っていた冬の北岳、夏に吊尾根の偵察をして満を持しての登頂だったので達成感もひとしお。

この日は二人ともお借りしていた山と道のAll-weather Alpha Jacketを着用していました。ヒートアップしすぎず、しなやかで動きやすい点はもちろん、何より気に入った点はフード周りの作りの良さ。頭の動きにしっかり追従するフィット感の良さは、強風の中でもストレスが少なかったです。

仙丈ヶ岳の奥には真っ白な北アルプス。360°これ以上ない天気の中の山頂をしばらく楽しみました。

名残惜しいですが、お昼前に下山を開始。先に続く稜線も魅力的で、冬の白峰三山もいいなぁと行きたいルートが増えるばかりです。

行きでトレースをしっかり付けたので歩きやすい。

帰りの八本歯の頭までの岩稜帯は登り基調になるので、行きに比べてサクサク進みました。

いつか行きたい夏のバットレス。下部にはトレースが付いていました。冬にここを登るなんて信じられない…

ボーコン沢の頭にて北岳に別れを告げて、樹林帯をひたすら下ります。ベースキャンプの池山御池に戻り、カレーうどんを食べてホッと一息。もう一泊する予定でしたが元気が出てきたのでこの日のうちに下山することにしました。

ここからが長く、疲労も溜まっており写真を撮る余裕もなく、気を抜かず歩き続けてすっかり真っ暗になった頃にあるき沢橋に到着。そこからまた鷲ノ住山まで400mを登り返して、林道を寝ながら歩き、深夜に車に戻りました。この日の行動時間は19時間弱。これ以上ない疲労感で沼のように眠りました。

余談ですが、北岳は妻と初めてテント泊で登った思い出の山。昨年はプチバリエーションの嶺朋ルートから登り、今年は冬の北岳という目標を達成しました。行くたびに新たな一面を見ることができ、新たな目標を与えてくれる、自分にとって特別でお気に入りの山の一つです。

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2025.2 北岳

DAY1 夜叉神〜鷲ノ住山〜あるき沢橋BS〜池山御池小屋
11.2km ↑ 900m↓450m

DAY2 池山御池小屋〜ボーコン沢の頭〜北岳〜(ピストン)〜夜叉神
22.6km ↑1700m↓2100m 

合計
33.8km ↑2600↓2550m 
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