1月後半のお休みで北アルプスの常念岳に行ってきました。ルートは冬季限定としてメジャーな東尾根のピストン。
冬の常念山脈は3年ほど前に横尾から蝶ヶ岳に向かった際、稜線に上がるまでの雪の深さに苦戦し、さらに稜線に上がって爆風に心を折られ蝶ヶ岳まであと少しのところで敗退した思い出があり、いつかリベンジしたいと思っていました。
年末の雪山泊まり山行の予定がインフルエンザによって流れてしまい、12月の笹山ぶりとなった泊まり山行は、ひたすら長い尾根の登りから始まりました。
Written by Shunpei

いつも通り塩尻峠を越えて安曇野に向かう道中、これから目指す常念岳のよく目立つピラミダルな山容にテンションが上る一行。
9時前にスタート地点である須砂渡ゲートに到着しました。すでに車が4台程止まっており、平日のバリエーションルートにも関わらず賑わいを見せています。
歩き始めてしばらくは林道が続き、重い荷物に体を慣らすように、息が上がらないように気をつけながら東尾根の取り付きを目指します。

しばらく林道を歩いた後、登山口までの途中にある送電線の巡視路が東尾根のスタートです。ザックを下ろして温まった体に合わせてレイヤリングを整えつつ小休止。昨シーズンと比べて積雪が多いため笹薮はほぼ隠れた状態で、しかもトレースもバッチリ。この日は標高差1400m、距離にして8.5kmの道のりです。気温はそこそこ高く、バテないように一歩一歩息を整えながら歩みを進めます。

途中、前常念岳の姿が見えたり安曇野の街が見えたりして、樹林帯の長い尾根でも先月の笹山ダイレクト尾根より眺望がありました。明日はアタックできるだろうか、今年はどこへ登ろうか、と思いつくままに考え事をしながら登っていると、いつの間にか幕営予定地に近づいていました。

2100mを過ぎると森林限界を抜け、眼の前に前常念がそびえ立ちます。樹林帯の中にも幕営適地はありましたが、せっかくだから眺めの良い物件にしようということで2200m付近の前常念と横通岳、安曇野の街が見える場所に決定。すでに整地された跡地を軽く均して、クロスオーバードームをサクッと設営。雪のブロックで風よけを作りテントの中に潜り込みました。

雪を溶かして水をひたすら作りつつ晩御飯の準備をしていると、カトラリーを忘れたことが発覚。あたりを見渡しても箸にできそうな木は落ちていなく、ペグも雪山仕様で箸替わりにはならない…仕方なく非常食のアルファ化米を開封し、付属のスプーンを使うことにしました。晩飯は袋の味噌ラーメンにカット野菜と、事前に冷凍しておいて当日歩きながら自然解凍させた豚肉を入れた肉野菜ラーメン。カトラリーの件でわたわたしている間にラーメンが煮えすぎてのびのびになってしまいましたが、雪山という環境のおかげでしょうか、味は絶品でした。
ご飯を食べ終わるとほんのりでしたが焼けた空がきれいでしばしの撮影タイム。

日が落ちた頃に外に出ると安曇野や松本の街が煌々としていました。最高の夜景を一等地で独り占めです。しかし寒いので程々にしてシュラフに潜り込み、翌朝のアタックに備えます。予報よりも冷え込まず、最低気温-10℃ほどで快適な夜でした。

翌朝は3時半に起床して準備開始。今回の朝ご飯はカルディで買ったお湯を注いで作れるインスタントのマッシュポテト。事前に試食せずぶっつけ本番でしたが、簡単に作れてしっかりマッシュポテトの味になっていました。しかし思いの外量が多くて飽きてしまう始末…味変したり付け合わせにしたりと工夫の余地があり、可能性を感じました。
5時半ごろにテント場を出発し、薄暗い中をヘッドライトで照らしながら歩き進みます。

昨日は日が差して暖かく、樹林帯は雪が溶け始めていたので、稜線上はカリカリかな?と思いきや、夜のうちに雪が降ったようで昨日までのトレースはリセットされていました。サラサラとしたパウダーな新雪は踏み心地良く、ぐんぐんと歩みを進めていきます。時折風が強く吹くものの気温は-8℃前後と比較的優しく、程よいコンディション。予報通り気持ちの良い晴れとはいきませんでしたが、時折見える先の稜線に心を弾ませながら登っていきます。

前常念の手前で日の出を迎えました。雪山での日の出は他のどのシーズンの日の出よりも好きな瞬間かもしれません。澄んだ空気の朝焼けの美しさはもちろん、太陽の陽の温かみのありがたさが身に沁みるからでしょうか。

そこからしばらく岩と雪のミックスの斜面を慎重に進むと前常念岳に到着。ここからは夏道に合流し、今回の山行のハイライトと言える広いなだらかな稜線歩きです。

とにかく良かったので写真多めかつ同じような写真ばかりで恐縮ですが、お許しください。笑

気持ちの良い道にサクサクと足が進み、最後の斜面を登りきって8:30、常念岳山頂に到着しました。

山頂で一通り写真を取って、まだ風が弱かったので祠の裏で小休止。本来は槍穂高のパノラマが見えるはずでしたが、岐阜方面は完全に雲の中…。かろうじて見える稜線の先には横通岳がドーンと横たわっていました。
ここ最近ハマっている行動食が、中国のお菓子の月餅。薄皮の生地に濃厚な餡が詰まっていて、商品にもよりますが食べきりサイズで300kcalを超える物もあります。パサつきすぎず、胡桃が入っているものは食感も楽しくてオススメです。

エネルギー補給しながら10分程粘るも視界に変化はなさそうで、諦めて下山開始。前常念に続くビクトリーロードを名残惜しみながら下ります。次第に雪も降り始め、登りのトレースは消え始めていました。

余談ですが店主が今季から愛用しているOuterUのFaceGlove(MidLoft)がとても調子が良くオススメです。鼻と頬だけをピンポイントで守るだけでこんなに快適なのか!と感じる一品。
暑いときには口元のネックウォーマーをずらして温度調整しつつも鼻先は守れます。日焼け防止にもなりますし、サングラスも曇らず入山から下山まで付けたままでした。私の冬山装備のスタンダードになっています。
OuterU | faceGlove® FLEX – MidLoft
テント場についた頃にはあたりは吹雪になりかけていました。パパっとテントを撤収して下山を開始しました。下山路がこれまた長く、途中トレースを外してもふもふのパウダーの中を転がるように下ってみたり、飽きつつも辛抱強く歩き続けて15時に登山口に到着。
下山してすぐのところにあるほりでーゆ〜でひとっ風呂浴びて帰路につきました。
健脚な方は日帰りで行く方もいる今回のルート。後半には極上の稜線歩きが待っているので、雪山テン泊の心得があれば、途中で幕営して稜線上でモルゲンロートを楽しむのがオススメです。
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2024.1
須砂渡ゲート〜(東尾根)〜前常念岳〜常念岳
21.9km
↑↓2185m
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使用アイテム一覧
- HERITAGE | クロスオーバードーム2 <2G>
- STATIC | AROUSAL L/S SHIRTS
- BRING | WUNDERWEAR HOODIE
- BRING | WUNDERWEAR LEGGINGS
- Rab | Mythic G Jacket
- Shelt | Down Pants
- SWANY | BX-405 Air Light 3 Finger
- HERITAGE | eVent® WINDPROOF ダウンテントシューズ
- STATIC × OWL MILS | ATLAS
- NORTEC | ALP 2.0
- OuterU | faceGlove® FLEX – MidLoft
- SAYAMA works | ダスティンホルダー2G改
- RIDGE MOUNTAIN GEAR | R ZIP WLT
- サーモス | FFX-901
- 山と道 | Stuff Pack