【登山紀行】vol.11「気の向くままに鈴鹿山脈縦走」(後編)

登山紀行

3月の休みに行ってきた3日間の鈴鹿縦走。
初日の雨とは打って変わって二日目の快晴に喜びを感じながら歩き進めるEightdoorの二人ですが、まだまだこの先の道のりは長く・・・。
鈴鹿山脈縦走2日目の石榑峠〜下山までの記録です。

Written by Chika


さて石榑峠を出発し、釈迦ヶ岳に至るまでの道の途中、いくつか通過する峠では花崗岩にハイマツ、苔が生えていて、カラフルな箱庭のようでした。関東では珍しい景色に癒やされます。

特に三池岳から釈迦ヶ岳の間は風光明媚な景色が楽しめるので、八風峠に上がって釈迦ヶ岳まで周回するルートも良さそうです。

峠もあればピークもあるわけで、細かいアップダウンを繰り返しながらじわじわ標高を上げていきます。
何箇所か砂のアリジゴクのような急斜面があり、足に来る。また崩落が進んでいる箇所も多く、想像以上に疲れました。

ようやく釈迦ヶ岳についた頃には疲労もピーク。翌日は午後から天気が崩れる予報だったので、今回はセブンマウンテン全山登頂は目指さず、御在所山のロープウェイで翌日の昼には下山することにしました。

途中の猫岳は、通過した後に振り返ったら本当に猫がおしりを向けて伏せているようでした。

猫岳からさらに下ったところにある羽鳥峰は、風化と侵食が進んだピークに固い岩が露出していて、「ここもそのうち金峰山の五丈岩みたいな積み上げられたような巨大な岩石が現れるのかな」なんて話をしながら休憩をとりました。

少し先に目をやると、砂地に石で描かれた絵が見えます。スヌーピーのようなキャラクターに少し元気をもらい、ハト峰峠からヒロ沢沿いを下降します。

さて、待ちに待った二日目の夕食は棒ラーメンに乾燥野菜と高野豆腐を大量投入したパワー系ラーメン。
高野豆腐はかなり満足感があり、しかも軽いので山で結構重宝します。

しっかりストレッチとマッサージをして、19時には就寝。
前日の夜とは打って変わって穏やかな夜で、多少底冷えはしたものの、川の流れる音を聞きながら久々にしっかりと寝られました。

翌朝は2時半に起床し、朝ご飯の用意。尾西の白米に混ぜるビビンバを投入し、ガッツリエネルギーを補給します。もちろん締めの海鮮チゲもセットで。

この日は4時に出発。しばらく沢沿いを歩きます。
昔はこのあたりの渓谷が観光で賑わっていたであろう跡がそこかしこにありました。
沢にぶつかる尾根を高巻きしたり、渡渉する箇所がいくつかあります。まだ暗い中のため、ピンクテープを探りつつ沢沿いを降り、ヒロ沢出合に到着。

本流の神崎川がかなり大きく、二日前の雨の影響もあり、地図上の渡渉ポイントが水没必須状態になっていました。しばらく他に渡れそうな場所を探してウロウロした末、意を決して素足になって渡渉します。
夫が先行している様子で私は確実に膝までいくことはわかっていたので、覚悟を決め気温2℃の中裸足で川へ・・・
ひえ〜〜〜つめたい〜〜〜足ツボ〜〜〜と内心悲鳴を上げながら一気に渡り切りました。
でも疲れた足が一気に冷やされて、かなりリフレッシュになりました。

ここからは神崎川を遡上していきます。神崎川にそそがれる小さい沢を何度か横切ったり、高巻きしたりしながら進みます。

途中には炭焼き窯の跡が散見。昭和30年頃までは現役で使われていたであろう釜も、すっかり苔と木々に覆われていました。
かつてはここから京都や名古屋などの大都市に燃料を供給していたのだろうなあ・・・。

沢沿いを歩くと、幼少期に父親の渓流釣りによく付いていったことを思い出します。すっかり童心に戻り、連日の疲れもいとわず、沢からのひんやりした空気を全身に浴びながら渓谷を遊ぶように上っていきました。

タケ沢出合の周辺は広く平坦で、まるで小梨平のような雰囲気でした。

その先の上水晶谷出合で神崎川最後の渡渉。夫はスイスイと石を渡りますが、リーチが足りない私は一か八かで足を伸ばしたらあえなく水没。渡りきった先で靴下を交換しました。

上水晶谷出合では千草街道と交差します。
千草街道は近江国(滋賀県)と伊勢国(三重県)を結ぶ鈴鹿山脈越えの街道で江戸時代まで近江商人が伊勢に出る重要な通商路でした。かの有名は織田信長はこの街道を通る際に鉄砲で狙撃されたこともあったとか。
実際に行ってみて知ることが多い歴史の名残。千草街道も面白そうで今度歩いてみたいですね。

源流に近づくにつれて水はエメラルド色になり、ユーシンブルーで有名な丹沢のユーシン渓谷を思わせます。段々と霧に包まれていく水晶谷は幻想的で、傾斜も緩く登りやすい道でした。

夢中になって歩いているとあっという間に御在所岳の真下の国見峠まで上がってきました。霧で視界はあまり広くありませんでしたが、そこからの道はきっちり整備されており、疲れた足にはありがたかったです。

10時50分ゴールの御在所岳山頂に到着。案の定視界はほぼ無く、いろんな奇岩や琵琶湖や街は全く見えませんでした。それでも山頂は観光客で賑わっており、さすが観光名所です。

ロープウェイのりばのレストランでお昼ご飯を食べて、そのまま下山。

霧の中ロープウェイに乗るのは初めてで、あたりが真っ白で無の空間に閉じ込められたようでした。対向の搬器が霧に吸い込まれていく様子は少し怖い。気を紛らわすように湯の山温泉郷の方に目をやると、これもまた高度があって、恐怖感は更に高まるだけでした・・・

山の締めにロープウェイのりばでご当地名物の柔らかいおせんべいを1枚ずついただきました。山椒が効いていてほんのり甘みもあって、疲れた体にちょうどよかったです。
美味しいね〜なんてのんびりせんべいを食べている間に、湯の山温泉駅行きのバスを逃し、湯の山温泉駅までアスファルトの道を40分ほど歩く羽目に・・・

道中には立派な砂防ダムがありました。
山中の縦走路も崩落が進んでいるところが多々ありましたが、脆い花崗岩の山と人々との攻防が麓でも繰り広げられていました。

そんなこんなで、最後まで山あり谷ありの山行でした。

帰路の車の中でこの3日間のことをぼんやり振り返っていたのですが、今回の山行で改めて、「山を楽しむことを主目的にすると、自分の想像よりはるかに豊かな時間になる」ということを実感しました。

7つの山頂を踏破することに固執せず、その都度タイムスケジュールを見直したことで朝の鮮やかな竜ヶ岳の姿がみれたり、ルート変更して沢に降りたことで、知らなかった面白い景色と出会えたり。

その場その場で臨機応変に、安全に面白く山を歩く方法を探る。繰り返し考え経験を積めばできることも行ける場所も増える。そしてもっと山が好きになる。

まさに今回の鈴鹿は自分にとってそんな時間で、ルート取りを工夫し、歩かれていない場所をあえて進んでみて発見したことや体験できた面白さがたくさんありました。

疲労困憊で座席に沈み込む体とは対照的に、気持ちは次の山にむけて高揚感でいっぱいでした。

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2024.03 鈴鹿山脈縦走
day1 西藤原駅〜藤原山荘
day2 藤原山荘〜治田峠〜竜ヶ岳〜石榑峠〜釈迦ヶ岳〜羽鳥峰峠〜ヒロ沢中間地点
day3 ヒロ沢中間地点〜ヒロ沢出合〜小峠〜国見峠〜御在所山

距離:32.3km
標高差:↑3143m ↓2105m
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