白毛門〜巻機山に続く上越国境稜線を縦走しようと前々から計画していた3月のお休み。
しかしながら3月に入ってから冬靴の修理が4月中頃までかかることが判明し、上越国境は泣く泣く断念。
3日間雪が無く縦走ができること、天気などを考慮して変更した行き先は、三重県と滋賀県を隔てる「鈴鹿山脈」。その山脈の主要な山7座を挙げた鈴鹿セブンマウンテンを、2泊3日ですべて繋げて縦走してみることにしました。
Written by Chika

関東からだと遠くてなかなか行けていなかった鈴鹿。折角の3日間の休みなので思い切って7つまとめて縦走すると決めたものの天気には恵まれず、雨の中車を走らせます。
今回は藤原岳から入道ヶ岳方面へ南下する計画だったので車はゴール地点の椿大神社の登山者駐車場へ停めて、そこからバスと電車を使い西藤原駅へ向かいました。

雨は14時には止む予報だったので、初日は少し遅いスタートで、藤原山荘でゆっくり休む計画です。
ガタゴト揺れるちょっぴりレトロな電車に身を任せながら、自分たちもそれだけ年を重ねたのだとしみじみ、ちょっと切なくなる。その地のバスや電車に乗ると、その地の暮らしが伝わってきて、自分が、今、旅をしているということを強く自覚します。
この日はEVERNEWのSL76g アンブレラが活躍。なんと76gで、紫外線もある程度カットしてくれるので、街歩きやテン場の移動、休憩時の日除けやビバーク時など、あると何かと便利です。

12時に西藤原駅に到着。ローカル線ならではの静かで味のある駅でした。
霧雨の街中を歩いていると、遠くから雷鳴が聴こえ、うーん、嫌な予感・・・。と思っていると、案の定5分も立たずに雨がポツポツ降ってきました。


駅から10分ほど歩いて登山口に到着。
登山口の休憩所にて身支度を整えていたら、ゴーっと強い雨が降り出し、しばし足止め。
立派な休憩所からは、藤原岳が地元の方に愛される山であることを想像させます。


さて、雨がおさまってきたところで登山再開。
登山道は川になりかけた場所もありましたが、程よい斜度で、良く整備されていてとても歩きやすく、雨が降っていることを忘れてしまうほどです。
道が根っこに覆われていたり、杉の樹林の雰囲気はどことなく奥多摩に似ていて懐かしさを感じました。


道中には行程を示す「合目」の看板があります。まだここか〜という気持ちになってしまうのであまり好きではありません。笑
8合目辺りからは石灰岩のカルストが目立つようになってきました。対岸の尾根では重機が急斜面でせっせと石灰を採掘している様子が見えました。

ときおりレインウェアに雨が当たる音に耳を傾けながら静かな樹林帯を登り進めると、あっという間に9合目まで着きました。
だいぶ木々の背丈が低くなり、町が雲の切れ目から顔をのぞかせます。
「あ!!すごい!!!」と驚いた様子の夫の声に、後ろを振り向くと虹が藤原岳の裾野にかかっていました。
雨の山はどこもみずみずしく、こころなしかイキイキしているように感じます。

9合目から山荘までは、登山道が泥とわずかの残雪でぬかるんで歩きづらかったです。風も強くなり、足を取られながら一歩ずつ踏み出します。この区間はこの日で一番長く遠い気がしました。

山荘は我々で貸し切りでした。濡れたものを乾かしつつ、翌日の行程備え早々に就寝。
翌日の朝ごはんは尾西の五目ごはんと海鮮チゲスープ。朝は簡単に用意できて体があったまる物がいいです。食べきった尾西のパックでフリーズドライの海鮮チゲスープを作るスタイルにハマっています。


身支度を終え、3時30分に出発。
稜線は前の晩の風の名残で冷たい風が西側から吹きつけ、山脈が雲をせき止めていました。
伊勢湾の夜景が山頂に近づくにつれて視界に広がって、キラキラと眩しく感じます。丹沢から見る景色とすこし似ていました。
4時に山頂に到着。しばらく夜景を眺めます。
長野に移住してから街の灯りを見ることが少なくなったので、しっかりと目に焼き付けておきました。


治田峠に向かう藤原岳直下の下りは、かなりの急斜面でした。登ってきた表登山道とは打って変わって、あまり人が入られていない様子。
少し先の多志田山のピークは巻くことにしましたが、その選択が間違いでした・・・。巻道は不明瞭で、途中に大きな崩落があり、暗闇の中急斜面を登り返したりトラバースしたり、かなり時間と体力を使ってしまいました。



やっと稜線に復帰した頃には朝日が出ていました。
遠くに見える雲がかかった竜ヶ岳、見えていないがその奥の釈迦ヶ岳・・・今日は長い1日になりそうだ・・・。
街から昇る太陽で赤く染まった樹林の中を黙々と進みます。


6時45分治田峠に到着。ここからは再びぐっと標高を上げていきます。
いくつかのピークを横切り竜ヶ岳に近づくと、あたりには霧氷が広がっていました。風もずっと強く吹いていたから、その影響でしょうか。

竜ヶ岳へ向かう最後の上りの手前、草原が広がる場所には鹿が3頭。ヒルも多いわけですね。
ここでピクニックしたらとても気持ちが良さそう、なんて休むことばかり考えながら歩いていましたが、先に見える竜ヶ岳の稜線に足取りも軽くなります。



樹林帯を抜けて竜ヶ岳山頂直下の開けた場所に出ると、一面に霧氷が広がっていて、青と緑と白のコントラストに目を奪われました。竜ヶ岳はシロヤシオの花や紅葉のイメージが強かったですが、木々や草原に霜がついた様子もまた絶景です。
風は相変わらず強く、足を取られそうになりながら竜ヶ岳までの残りの道を進みます。



山頂からは鈴鹿の街や遠くに南アルプスの山々や御嶽山を見ることができました。素晴らしい景色でしたが、あまりに風が強いので写真を撮って早々に下り始め、しばらくは絶景の稜線歩きを楽しみました。

急な下りの取り付きではこれから向かう釈迦ヶ岳が見え、そのあまりの距離感に気が遠くなります。


このあたりから藤原岳の石灰岩とは打って変わって、花崗岩や、花崗岩が砕けた砂地が目立つようになり、それらがまた滑りやすく、気を遣いながら下ります。ところどころビーチの様になっており、日向山や鳳凰三山を思わせる景色でした。
石榑(イシグレ)峠までの道で3組ほどのパーティとすれ違いました。この辺は暖かいけど、上は風が凄いぞ・・・なんて内心思いながら後ろ姿を見送ります。

もともとの計画で1日目に来る予定だった石榑峠。釈迦ヶ岳までの長い上りに備えて、マッサージしながらここでゆっくり休みます。

少し進んだ場所には芝生が広がっていて豊田市の奥の山までよく見えました。
振り向けば大きく立派な竜ヶ岳。風が穏やかなときにまたゆっくり来たいものです。
(後編へ続く)
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2024.03 鈴鹿山脈縦走
day1 藤原岳登山口〜藤原岳
day2 藤原岳〜治田峠〜竜ヶ岳〜石榑峠 ・・・今回はここまで!
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