Eightdoorの二人とも好きで、思い入れのある北アルプスの薬師岳と黒部五郎岳。
長野に住んでいてもなかなか見られない、その2座の雪がついている姿が見たい!!ということで飛騨・神岡にある天蓋山に登ってきました。
無雪期は手軽に登れる山として人気の天蓋山。標高は1527mとそこまで高くはありませんが、雪深い飛騨にある山。直近の登山道の情報も少なく、山はどんな様子かな〜とワクワクしながら向かいました。
Written by Shunpei


朝5時過ぎに茅野を出発。この日は朝焼けが美しく、茅野から松本へ抜ける道中は、空のグラデーションと山肌のコントラストが美しい八ヶ岳や、ピンクに優しく染まった北アルプス前衛の山々が見られました。

松本から先の国道158号は、通るたびに、よくこんなところに道を造ったな、と感じる険しい道。
島々谷から徳本峠を越えて上高地や蝶の方に歩いてみたいな、とか、坂巻温泉の駐車場が混んでるし上高地は人が多そうだな、とか、山のことばかり話しながら車を走らせます。アカンダナ山を貫く安房トンネルは高温岩帯を通る難工事だったそうで、このあたりが温泉地なのも頷けます。先人たちの苦労に感謝しながら岐阜県に入ります。


スーパーカミオカンデが有名な神岡町から更に峠を越えて登山口のある山之村に9:00に到着。道中にはハイパーカミオカンデの抗口があったり走り応えのある峠道でした。
今回のスタートは奥飛騨山之村牧場。装備を整え牧場内を進みます。少し歩いた牛舎の脇から登山道に入ります。振り返ると奥の方に薬師岳が見えて、さぞ山頂からの展望は凄いんだろうな、と期待は急上昇

直近で雪が降ったようでトレースはなく、出だしからワカンを装着します。

序盤は小さな川にできたスノーブリッジで何度か渡渉を繰り返し、沢沿いをなだらかに登っていきます。ベースレイヤー1枚で丁度よいくらい気温が高く、木の上に乗っていた雪の落下を何度も食らいました。


1時間くらい進んだところで尾根の登りに入ります。この道はYAMAP新道という名前がついており、地域や有志の方々により昨年に整備された道だそうです。これでもか!というくらいピンクテープがつけてありました。
斜度もそこそこ、膝まで雪に埋まる登りごたえのある尾根をしばらく登ります。


急斜面を登り切ると1200mのピークに出て、このあたりから左側に天蓋山が姿を表します。空はすこし淀み、山は枝から葉が落ちた木々の隙間から雪の斜面が見えて、まるで水墨画のような景色が広がります。しかし、いくつかのピークを回り込んだ奥に見える山頂は、、、うーん、あまりにも遠い。。

1300mを超えたあたりで更に雪が深くなり、ペースもだいぶ落ちました。湿った重たい雪はワカンに纏わり付き雪ダンゴを越え、雪まんじゅうに。まんじゅう足は鉛を装着したように重く、プルプルする太ももにムチを打ち、一歩ずつ気合を入れて進みます。

山頂直下では場所によってはストックでラッセルしながら足場を作りながら登ります。なんやかんや今シーズン一番の積雪量でした。


直下の急斜面を登りきると足跡一つ無い真っ更な山頂に出ます。
山頂の標識は埋まっており、積雪量は2m近くありました。

山頂についたときには一面曇り空で、お目当ての薬師岳と黒部五郎岳は残念ながら雲の中。
晴れると劔・立山・薬師・黒部五郎・笠ヶ岳、乗鞍岳や御嶽、白山が良く見えるそうです。360°の展望の良さや広い山頂、登山道の雰囲気は、茅野で言うところの守屋山のような感じでした。


眼下には神岡の街や登山口のある牧場が見えました。
薬師岳と黒部五郎岳は見えませんでしたが、その2座の中間に位置する北ノ俣岳の登山口近辺が見えて、雪の黒部源流域へのあこがれをより一層強めました。
山に登ると、気になる山や登ってみたい尾根が増えて、時間が足りませんね。


真っ白な山頂を堪能して下山開始。
積雪が多く、藪が埋まってそうだったので、下りは登山道ではない細い尾根を選択。尾根の入口が広く、地図を見ながら間違った尾根に入らないように注意して進みます。
踏み抜きが多く、ところにより腰まで埋まってしまったり、苦戦しながら標高を下げます。

1時間ちょっと下ると沢沿いの登山道と合流しました。登山道にはスキーのトレースがあり、疲れがピークに達していた我々に救いの手が現れたかのようでした。


沢沿いをしばらく進み、コテージの合間を抜けると登山口に到着、車道に出ます。
普段は好きではない車道歩きですが、ワカンと雪まんじゅうから開放され、今回ばかりはアスファルトの地面に感謝しました。
車道を20分程歩いてスタート地点の駐車場に到着。
今回は湿った雪に手こずり、自らの体力不足を痛感すると同時に、今シーズン初の深い雪に心地よい疲労感と達成感に包まれていました。

その日は4月以降に知人が飛騨にオープンするゲストハウスをお借りしました。
吹き抜けで天井が高いリビングに大きな薪ストーブがあり、窓からは飛騨古川の街が見下ろせる素敵な建物です。薪ストーブの前でのんびりと山の余韻に浸りながら、ゆっくりと静かに流れる時間を堪能。
今回は叶わずだった飛騨からのアルプスの眺めや白山を見に、無雪期の天蓋山にサクッと日帰りで登って、高山の観光や平湯の温泉と合わせて楽しもう、と暖炉の火を見ながら心に刻みました。
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2024.03 天蓋山
奥飛騨山之村牧場〜1200mピーク〜天蓋山〜北側尾根〜天蓋山登山者駐車場〜奥飛騨山之村牧場
距離:8.6km
標高差:↑650m ↓650m
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