【登山紀行】 Vol.27 花と岩の後立山連峰八ッ峰キレット越え

登山紀行

3大キレットのうち内2つを擁する後立山連峰はなんとなく縦走するには腰が重く後回しになっていたのですが、バリエーションルートの足慣らしがてらに今年こそはと狙っていた場所です。

そんな中、7月の定休日に1泊2日の計画で行けそうな見込みが立ったので、夏のお花が盛りの間にさっと歩いて来ることにしました。

Written by Chika


縦走1日目。いつものように夜明け前の茅野を出発し、信濃大町駅へ。今回は入山口と下山口が異なるので、信濃大町駅前に車をデポして扇沢までバスで向かいます。

流石に夏のアルプスは平日でも登山客が多く、バスはほぼ満員。

40分ほどバスに揺られ、7時前に扇沢駅に到着しました。バスの乗客の大半はそのまま室堂に向かっていきました。立山もきっとお花がいい頃だろうな〜と景色を思い浮かべつつ、少数派の方と柏原新道へ進みます。

爺ヶ岳の入口、柏原新道登山口

夫が以前日帰りで針ノ木サーキットを歩いていたので、柏原新道の様子はその時の話を聞いていました。曰く歩きやすいよ、とのことだったのですが、本当に歩きやすくてスイスイ足が進みます。気づいたら前のバスに乗っていた人をごぼう抜きして種池山荘にて無事にピザをゲット。

ピザ待ちの合間に小屋の近くを散策すると、池塘にサンショウウオの卵がたくさん産み付けられていました。よく見ると泳いでいる個体も何匹かいました。その少し先にはキヌガサソウが大輪を開かせていました。見事な群生で、お花を求めて歩きに来たかいがありました。

さて、今回の縦走の一番の上りを終え、お腹も満たしたところで、晴れやかな気持ちで本日のピーク爺ヶ岳へ歩き出しました。爺ヶ岳の上りの取り付きまではチングルマが群生していて、その可憐な姿に思わずニッコリ。やっぱり夏のアルプスといえばチングルマは欠かせないですね。

南峰、中峰と登り終え、一呼吸。気温が高かったせいか意外と体力を使いました。登山道にはコマクサが風に揺られていたり、イワギキョウが眩しそうにしていたり。冷池山荘の手前では可憐なイワツメクサにも出会いました。お花目当てとは思っていましたが、ジャストタイミングにあたって良かったです。

13時ごろに冷池山荘に到着。受付を済ませ、小屋の少し上にあるテント場へと向かいました。テント場からは歩いてきた道がよく見えて、種池山荘の奥には蓮華岳や針ノ木岳が顔を出していました。

山を眺めたい気持ちをこらえ、さっとテントを設営。夫はそのまま鹿島槍ヶ岳を見に散歩へ行きました。私はテントの中で身支度を整えているうちに眠くなってしまい、そのまま2時間ほど昼寝をしてしまいました。

16時ごろにはあたりは雲に包まれていました。段々と雲が紫色に変わってきて、夕陽にほんの少し期待をしつつ夕食の支度に取り掛かります。この日の夕飯は尾西の白米に無印のご飯にかけるシリーズ。気分でフレーバーを変えられるのがお気に入りです。

MIYAGENのIso COZYはシッカリ保温してくれて、かつ収納量が多いところがお気に入り。夏場も冷凍した肉をこのコジーに入れて運んでカレーを作ったりします。

MIYAGEN Trail Engineering | Iso COZY

近年はアルプスでも夏場は夜10℃を上回ることが多く、ダウンシュラフの出番はほぼなし。夫はADRIFT Ti SLEEPING BAGで寝ています。私はENLIGHTENED EQUIPMENTのRevelation Sleeping Quilt(10℃)を使用。

STATIC | ADRIFT Ti SLEEPING BAG

空を眺めながらの夕ご飯。夕陽はやはり見れませんでした。夏山ではなかなか夕陽を見ることができないのが残念です。いつも通り締めのスープで水分も補給して入眠。

ふと23時ごろに目が覚めて、外を覗いてみたら満天の星空が広がっていました。ちょうど夫も目が覚めてしまった様子。二人して昼寝が効いてしまったようでした。こんなにきれいな天の川を見るのは何年ぶりかな〜と思いつつ、星空撮影大会をしばらく楽しみました。

縦走2日目。朝(夜食?)はさっとパンとコーヒーで済ませ、3:00に種池山荘をスタート。しばらくは暗い笹薮の道を進みます。前をゆく夫のヘッドライトで起こされた虫たちに襲われながら、50分ほどで布引山に到着。薄っすらと明るくなってきた稜線を見渡すと、雲海が広がっていました。朝焼けへの期待が高まります。

ちょうど鹿島槍ヶ岳南峰で日の出を迎えました。あたり一面の雲海から顔を出すアルプスの峰々とグラデーションに染まる空。はるか先には富士山まで見えました。今年の夏一番の朝焼けといっても過言ではありません。これから向かうキレットの上を流れる雲も見事でした。行動食を食べつつ、山頂で一緒になったソロの方と写真を撮り合いっこして30分ほど空の色の移り変わりをゆっくりと楽しみました。

さて、この先五竜岳までは岩場の難所。ヘルメットを装着して気を引き締め、南峰を慎重に降りていきます。ここの下りはなかなか緊張感の走る場所ですが、三点支持で落ち着いて降りていきクリア。
鹿島槍ヶ岳北峰はスルーしました。笑

この先八ッ峰キレットまでは細かな岩場のアップダウンがありつつ、基本は砂地の稜線で思っていたより歩きやすかったです。前方にそびえる五竜岳のどっしりとした山容を眺めながら、次の目的地キレット小屋へと急ぎます。

実は今回の縦走の目的の一つにキレット小屋で働いているお店の常連さんに会いに行くというものもあり、小屋に着く時間はちょうどお掃除のタイミングかなと思いつつ、ご挨拶できたらいいな、とワクワクしながら小屋までの道を歩きました。

小屋の手前にある八ッ峰キレットは確かに切れ落ちた場所でしたが、しっかりとした梯子がかかっていてそこまで怖い感じはありませんでした。

6:30頃キレット小屋に到着。ちょうどヘリの荷揚げの日だったようで、朝から総動員で忙しそう。ハイシーズンだからか、県警の警備隊の方が何名か小屋の外で待機していました。

これはちょっと忙しいかな…と思いつつ、トイレをお借りするために小屋へ入るとちょうど常連さんもとい小屋番さんが我々を待っていてくださり、無事目的を果たせました。少しだけ立ち話をして再会を約束し小屋をあとにします。

この夏は暑すぎて日焼けなんて気にしてられず、ALL ELEVATION S/S一枚で歩くことが多かったですが、例に漏れず今回も着用。おかげさまで腕が常に真っ黒です。ALL ELEVATIONシリーズのお気に入りポイントは滑らかな着心地とベタつきにくさとボーダー感のあるデザイン。泊まりの山は基本ベースレイヤーにこれをチョイスしています。

STATIC | ALL ELEVATION S/S SHIRTS Women’s

靴は今年購入したアークテリクスのバーテックス アルパインが結構調子よく、安定して岩場に乗れるのとザレた場所でもグリップが結構効きます。クッション性もあるので長距離で岩場も、というシーンにもってこい。

CにしかみえないG5ポーズ

さて、キレット小屋を出発してこの日一番の登りの五竜岳へと向かいます。こちら側から見ると図体のでかいステゴサウルスみたいな稜線だななんて思いつつ続く難所を慎重に歩行。個人的にはキレット小屋からG5までの道のほうが全体的に悪い印象でした。鹿島槍ヶ岳方面に向かってくる登山客とすれ違いつつ、普段のあまり人とすれ違わない山行とのギャップに夏のアルプスの賑わいを感じます。

G5を越えてようやく五竜岳の登りに取り付きました。手を使いながらぐんぐん上がっていく感じが気持ちよく、見た目以上にあっという間に山頂に到着。山頂はすでに雲に包まれていて、歩いてきた道は見えなくなっていました。それでも無事3大キレットの一つを制覇し、達成感もひとしお。行動食を食べつつ難所を越えた足を労わりました。

リフレッシュしたところで下山開始。真下に見える五竜山荘が疲れた足には遠く感じます。ところどころチングルマが咲くザレた斜面を慎重に下っていき五竜山荘に到着。ちょうどお昼前で外のベンチは休憩の方で賑わっていました。電車の時間が気になる頃合いになってきたので今回は通過しそのまま遠見尾根へ。

五竜山荘を少し過ぎた小ピークからの唐松岳方面

遠見尾根からは五竜山荘を目指す人が続々と上がってきてすれ違いが大変でした。皆さん長い尾根を汗だくになりながら歩いてきて、あとどのくらいですか〜と聞かれることもしばしば。こういう時は「あとちょっとですね〜」というのがセオリーですが(笑)、正直に時間を伝えたら残念そうにしていてちょっとだけ申し訳ない気分になりました。登りは五竜山荘が見えてからが道が急になり大変です。

西遠見山では30人くらいの学校登山のグループにも遭遇しました。改めて考えると長野のこの学校登山という文化ってすごいよな…と思いつつ、山を嫌いにならないでねと心の中で祈りつつ、集団をお見送り。

その先もだらだらと続くアップダウンの尾根に嫌気が差してきた頃、ようやく今日の最後のピーク小遠見山に到着。そこからは木道があったり階段があったりとゆるく下っていって、あっという間にゴール地点のアルプス平まで来ていました。アルプス平は植物園になっていて、高山植物を見に来たハイキングの方がたくさんいらっしゃいました。

なんやかんやこの日は15km(といっても半分は遠見尾根ですが)歩いていたので、早く座りたい一心で一目散にロープウェイに乗り込みました。ゴンドラに乗る際に渡された冷えたおしぼりのサービスが最高にありがたく、登山客のことを理解してくれている…と感激しました。

下山後はエスカルプラザの竜神の湯にてリフレッシュ。アルカリ性の温泉でお肌しっとり体もぽかぽかになりました。スタートの地、信濃大町には神城駅から電車で戻りました。

お盆前の縦走休暇は最高の朝焼けと高山植物に癒やされた2日間となりました。

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2025.7 後立山連峰縦走

DAY1 扇沢〜爺ヶ岳〜冷池山荘
9.3km
↑1,491 ↓453m

DAY2 冷池山荘〜鹿島槍ヶ岳〜五竜岳〜アルプス平
15.0km↑1,337 ↓2,271m

合計
24.3.9km
↑2552m ↓2450m
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